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厚生労働省「強皮症における病因解明と根治的治療法の開発」研究班・
第7回強皮症研究会議(SSc, Scleroderma Study Conference)合同会議プログラム

日時:平成16年1月17日(土) 8:30〜
場所:エーザイ(株)本社本館5階ホール

I. オープニング・リマーク

8:30〜8:40
竹原和彦(金沢大皮膚科)

II. 厚生労働省健康局疾病対策課・課長からの御挨拶

8:40〜8:50

III. ACRレポート(10分)

8:50〜9:00
藤本 学(東京大皮膚科)

IV.ワークショップ「全身性強皮症の重症度指針・治療指針(案)」

(口演7分、討論3分)
座長:竹原和彦(金沢大皮膚科)(9:00〜10:30)
   近藤啓文(北里大内科)
○1. 新診断基準、病型分類と全身一般:竹原和彦(金沢大皮膚科)
○2. 皮膚:佐藤伸一(金沢大皮膚科)
○3. 肺:桑名正隆(慶応義塾大先端医科学)
○4. 消化管:遠藤平仁(北里大内科)
○5. 腎臓:遠藤平仁(北里大内科)
○6. 心臓:川口鎮司(東京女子医大膠原病リウマチ痛風センター)
○7. 関節:石川 治(群馬大皮膚科)
○8. 血管:尹 浩信(東京大皮膚科)

V. 一般演題I(口演7分、討論3分)

座長:三森経世(京都大内科)(10:30〜12:00)
   佐藤伸一(金沢大皮膚科)

○1. 強皮症における血管内皮前駆細胞異常

桑名正隆、岡崎有佳(慶應義塾大先端医科学)

近年、成人での血管新生に骨髄由来の循環血管内皮前駆細胞(CEP)が重要なことが示された。強皮症、関節リウマチ、健常人でCEPを定量化したところ、強皮症で他の2群に比べて有意に減少していた。一方、強皮症では循環血中のVEGFなどの血管新生因子はむしろ増加し、CEPの成熟血管内皮細胞への分化能が健常人に比べて著しく低下していた。以上より、強皮症ではCEPの減少と成熟障害が存在し、末梢血管病変との関与が考えられた。

○2. 膠原病に伴う肺高血圧症におけるBMPRII, ALK1に対する自己抗体の検索

佐藤隆司,桑名正隆(慶應義塾大先端医科学)

原発性肺高血圧症の遺伝子素因としてBMPRII, ALK1遺伝子変異が同定されている。そこで,肺高血圧症を伴う膠原病20例の血清を用いてBMPRII, ALK1に対する自己抗体を検索した。In vitroで転写・翻訳したBMPRII, ALK1リコンビナント蛋白を用いた免疫沈降法,BMPRII, ALK1遺伝子導入COS細胞を用いた蛍光抗体法,BMPRII細胞外ドメインを用いた免疫沈降/ブロットのいずれの方法でも特異自己抗体は検出されなかった。

○3. 全身性強皮症における抗phosphatidylserine-prothrombin複合体抗体の検討

長谷川 稔1、佐藤伸一1、山崎雅英2、竹原和彦1(1金沢大皮膚科、2同血液内科)

全身性強皮症(SSc)患者血清におけるphosphatidylserine-prothrombin複合体に対するIgG抗体(抗PS/PT抗体)をELISAにて測定した。抗PS/PT抗体は正常人では検出されなかったが、SScの16%に検出された。抗PS/PT抗体は、血栓症、皮膚潰瘍、肺線維症、肺高血圧症を有する症例に有意に高率にみられ、血栓症の危険性や臨床症状の把握に有用と思われた。

○4. 強皮症におけるフォスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体の陽性率と臨床症状との関連

山崎雅英(金沢大血液内科),長谷川 稔,佐藤伸一,竹原和彦(金沢大皮膚科)

抗リン脂質抗体のうちループスアンチコアグラント(LA)の本体は抗β2-GPI抗体および抗プロトロンビン抗体であることが知られている.近年,抗プロトロンビン抗体測定が可能となったことから本抗体と強皮症の臨床症状との関連について検討した.

金沢大学医学部附属病院皮膚科通院中の強皮症症例70例より得た血清を用いてA社製ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(aPS/PT)およびプロトロンビン非添加抗フォスファチジルセリン抗体(aPS)を測定した.同時にB社製aPS/PT抗体も測定した.いずれの抗体も血栓症合併SSc症例(12例)の方が非合併SSc症例より高値を示したが有意差が認められた抗体はB社製aPS/PT抗体のみであった.A,B両社のaPS/PTの間に有意の相関は見られなかった.以上の結果より,強皮症症例においてaPS/PT抗体陽性症例が12.9〜24.3%と高率に陽性であることが判明した.aPS/PT抗体は強皮症における血栓症の危険因子である可能性が示唆されたが,AおよびB社のaPS/PTは相関せず,異なった抗体を見ているものと考えられ,aPS/PT抗体測定においては注意を要するものと考えられた.

○5. 全身性強皮症における血液中B細胞ホメオスターシスの異常

佐藤伸一1、藤本 学2、長谷川 稔1、竹原和彦1(1金沢大皮膚科、2東京大皮膚科)

全身性強皮症(SSc)では血液中ナイーブB細胞が増加し、一方、メモリーB細胞や形質細胞前駆細胞は減少していた。SSc由来メモリーB細胞ではCD19、CD80、CD86の発現が増強し、慢性的な活性化が示唆された。さらに、SSc由来メモリーB細胞ではCD95発現増強とアポトーシスの亢進が認められたが、免疫グロブリンの産生は増強していた。このように、SScでは血液中B細胞サブセットの数と機能に内在性の異常が認められた。

○6.強皮症におけるB細胞機能分子多型の検討

土屋尚之1、黒木喜美子1、人見祐基1、佐藤伸一2、藤本 学3、竹原和彦2、徳永勝士1 (1東京大人類遺伝学, 2金沢大皮膚科, 3東京大皮膚科)

強皮症の遺伝素因を解明するために、B細胞機能分子に注目し、遺伝子多型と疾患との関連を検討した。昨年度、関連の可能性を報告したCD19遺伝子プロモーターおよび3ユ非翻訳領域多型につき、金沢大にて収集された患者対照群にて関連を検討したところ、いずれについても有意な関連が確認されたが、プロモーター多型との関連がより顕著であった。また、CD72多型についても検討したが、明らかな関連は検出されなかった。

○7. 強皮症患者におけるCD1d分子アイソフォームとNKT細胞反応性の解析

後藤大輔、松本 功、伊藤 聡、堤 明人、住田孝之(筑波大内科膠原病リウマチアレルギー)

NKT細胞は均一なTCRを発現し、CD1d分子により提示された糖脂質抗原を認識する。以前、NKT細胞の抗原反応性が自己免疫疾患患者において低下し、またCD1d分子にはアイソフォームが有ることを報告した。今回、強皮症患者におけるNKT細胞の増殖能の低下の原因として、野生型CD1d分子と2種類の抗原結合部位の保たれているアイソフォームに着目し、NKT細胞の動態との関連性について検討を行った。

○8. Peroxisome Proliferator-activated receptor γ(PPARγ)を標的とする強皮症様マウスモデルの治療の試み

遠藤 平仁,河野 静,橋本 篤,近藤 啓文(北里大膠原病リウマチ感染内科),安藤 みゆき(同呼吸器内科),村上 洋介,北里 英郎(同微生物学),林 泉(同薬理学)

PPARγは細胞分化、アポトーシス、抗炎症に関与する転写因子である。PGD2の非酵素的分解物15 deoxy12,14ΔPGJ2(15d-PGJ2)は生体のPPARγリガンドになり種々の作用を発揮する。ブレオマイシン投与マウスによる皮膚硬化、間質性肺炎モデルに対する15d-PGJ2連日投与またPGD合成酵素cDNA導入線維芽細胞の移入を行いその効果を観察した。15d-PGJ2は皮膚線維性硬化、間質性肺炎及び肥満細胞からヒスタミン遊離、向線維性サイトカインの抑制作用を示した。以上の結果はPPARγ ligandを用いた強皮症の新たな治療法に結びつく可能性があると推測された。

昼食 12:00〜12:45 

VI. 一般演題II(口演7分、討論3分)

座長:石川 治(群馬大皮膚科) (12:45〜14:05)
   川口鎮司(東京女子医大膠原病リウマチ痛風センター)

○9. 全身性強皮症患者血清中の可溶性Endoglin値の検討

藤本 学(国立国際医療センター研究所、東京大皮膚科)、尹 浩信(東京大皮膚科)、佐藤伸一(金沢大皮膚科)

血管内皮細胞や線維芽細胞に発現するTGFb受容体であるEndoglin (CD105)の可溶型の血清中濃度を全身性強皮症患者70例で検討した。可溶性Endoglinは70例中11例(16%)で上昇が認められた。このうち10例は抗セントロメア抗体陽性であり、抗セントロメア抗体陽性群の中では50%が可溶性Endoglin高値であった。

○10. 皮膚線維化におけるCTGFの役割

中條園子、金原拓郎、白崎文朗、竹原和彦(金沢大皮膚科)、川原 繁(国立金沢病院皮膚科)、稲垣 豊(東海大学医学部地域保険学部門)

トランスジェニックマウスを用いて皮膚線維化モデルを作製し、I型コラーゲンのα2鎖をコードするproα2(I)コラーゲン遺伝子の転写活性を測定した。TGF-βのみの注入で転写活性は4日目をピークに低下したが、TGF-β3日間注入後CTGFを4日間注入すると転写活性は5日目以降も高値を示した。皮膚線維化の機序として、TGF-βが皮膚線維化を誘導しCTGFが線維化を維持することが示唆された。

○11. TGF-bによる分化・増殖調節機構の検討

近藤美幾、羽生亜紀、斉藤正夫、今村健志、宮澤恵二、宮園浩平(東大分子病理、癌研生化学部)

TGF-bは細胞の増殖や分化、さらには線維化、血管新生等に深く関与しているが、詳細な分子機構は明らかになっていない。また、TGF-bは上皮系細胞と間葉系細胞に対して異なった作用を有する。そこで、これらの作用機構を解明するためにTGF-bのI型受容体に特異的な阻害物質を用いて、TGF-bの代表的な作用である増殖調節機構とepithelial-mesenchymal transtionに関して分子生物学的に検討を行った。

○12. TGF-b/Smadシグナリングからみた臓器線維症の治療戦略

稲垣 豊、櫛田美和、岡崎 勲(東海大基盤診療学)池田一雄(大阪市立大器官構築形態学)東 清史(住友化学・生物環境科学研究所)

TGF-b/Smadシグナル伝達系は臓器線維症の進展過程において重要なはたらきを演じており、その拮抗阻害は線維化の予防と治療に有効と考えられる。臨床応用にあたっては他臓器への影響をいかに最小限にとどめることが肝要であるが、演者らはa2(I)コラーゲン遺伝子(COL1A2)上流-17.0〜-15.5kbに存在する組織特異的エンハンサー配列を用いることで、TGF-b/Smadに対する拮抗阻害因子を線維化組織特異的に発現させるアデノウイルス二重感染法を確立した。この系を用いてCOL1A2転写抑制因子YB-1を発現させた際の線維化抑制効果について紹介する。

○13. TGF-b刺激によるhuman a2(I) collagen遺伝子発現亢進におけるPI3-kinaseの意義

浅野善英、尹 浩信、山根謙一、神人正寿、三村佳弘、玉置邦彦(東京大皮膚科)

TGF-bは線維化を強力に誘導する因子であり、強皮症皮膚線維芽細胞の細胞外マトリックス産生亢進において中心的な役割を果たしている。最近、PI3-kinase活性を抑制することにより、TGF-b刺激によるSmad2のリン酸化が有意に抑制されることが報告された。今回我々は、TGF-b刺激によりSmad3依存性に発現が亢進するヒトa2(I)コラーゲン遺伝子に注目し、PI3-kinase活性の抑制がSmad3のリン酸化に及ぼす影響およびヒトa2(I)コラーゲン遺伝子の発現に及ぼす影響について検討した。正常皮膚線維芽細胞においては、PI3-kinase inhibitor LY294002はTGF-b刺激によるヒトa2(I)コラーゲンのmRNAの発現亢進を有意に抑制した。LY294002およびPI3-kinase p85 subunitのdominant negative mutantの強発現はTGF-b刺激によるヒトa2(I)コラーゲンの転写活性の亢進を有意に抑制し、その作用はSmad3結合部位を介していた。また、TGF-b刺激によるSmad3のリン酸化は、LY294002およびFYVE domain proteinのmislocalizationを誘導する2xFYVEの強発現により有意(約50%)に抑制された。以上の結果から、正常皮膚線維芽細胞においてTGF-b刺激によるSmad3の効率的なリン酸化にはPI3-kinase活性およびanchor proteinとして機能するFYVE domain proteinが必要であることが示された。一方、強皮症皮膚線維芽細胞では、LY294002あるいは2xFYVEの一過性強発現によりヒトa2(I)コラーゲン遺伝子の発現は有意に抑制され、Smad3の恒常的なリン酸化はほぼ完全に抑制された。以上の結果から、強皮症皮膚線維芽細胞におけるautocrine TGF-b signalingの確立にはPI3-kinase活性が不可欠であることが示された。

○14. HGFのコラーゲン遺伝子転写に対する抑制効果とその機序

稲垣 豊、櫛田美和、岡崎 勲(東海大基盤診療学)汐田剛史(鳥取大遺伝子再生医療学)

HGFは肝細胞増殖作用の他にも多彩な生物活性を有しており、そのひとつに臓器線維症に対する抑制効果が知られている。これまで、HGFによるTGF-bの発現抑制やコラゲナーゼ産生の促進が報告されてきたが、コラーゲン遺伝子転写に対する直接的な抑制効果の有無は不明であった。演者らは、transfection assayならびにMAP kinase inhibitorsを用いた実験により、HGFによりリン酸化されるERK1/ERK2がSmad3に対して拮抗的にはたらくことで、TGF-bによるコラーゲン遺伝子の転写促進を抑制することを明らかにした。

○15. 強皮症患者線維芽細胞のコラーゲン代謝に及ぼすHepatocyte growth factor(HGF)の影響

シェリフ多田野亮子1,大田明英2,春田善男3,小荒田秀一3,牛山 理3,多田芳史3,長澤浩平3 (1佐賀大医学系研究科, 2同看護学科, 3同内科)

HGFのコラーゲン代謝に及ぼす影響を明らかにするために,正常人および強皮症患者の皮膚線維芽細胞をrHGFで処理し,培養上清中のMMP-1,・型コラーゲンを蛋白およびRNAレベルにて測定した.HGFで処理した細胞培養上清中のMMP-1は有意に増加し,その増加率は強皮症線維芽細胞の方が高い傾向にあった.また,HGFは強皮症細胞におけるコラーゲン産生量を有意に抑制した.HGFは,強皮症における抗線維化薬として有望であると考えられる.

座長:桑名正隆(慶応義塾大先端医科学)(14:05〜15:15)
   尹 浩信(東京大皮膚科)

○16. ヒト皮膚線維芽細胞におけるEGFによるfibronectin発現亢進の機序について

三村佳弘、尹 浩信、神人正寿、浅野善英、山根謙一、玉置邦彦(東京大皮膚科)

強皮症患者由来の皮膚線維芽細胞ではfibronectinの発現が亢進していることが知られている。今回我々はヒト皮膚線維芽細胞においてepidermal growth factor (EGF)によるfibronectin発現亢進の機序について解析した。EGF刺激により、濃度および時間依存性に蛋白およびmRNAレベルでfibronectinの発現亢進を認めた。EGFによるmRNA発現亢進は転写阻害剤であるActinomycinD添加にて抑制されず、またEGFは fibronectin遺伝子転写活性を変化させなかったが、fibronectin mRNA stabilityはEGF刺激により亢進した。EGF刺激によるfibronectin蛋白およびmRNAの発現亢進はprotein kinase C (PKC)阻害剤であるCalphostin C、およびPKCδ特異的阻害剤であるRottlerin添加で抑制された。さらに、dominant negative form PKCδを強制発現させた細胞ではEGFによるfibronectinの産生亢進が阻害され、EGF刺激により線維芽細胞におけるPKCδ発現量が増加することが確認された。さらに、RottlerinはEGFによるfibronectin mRNA stability亢進作用を抑制した。以上よりEGF刺激によるfibronectin発現亢進はPKCδ情報伝達系を介して同遺伝子mRNA stabilityを亢進させることによることが明らかとなった。

○17. 皮膚線維芽細胞におけるEpidermal Growth FactorによるII型TGF-b受容体発現亢進の機序について

山根謙一、尹 浩信、浅野善英、玉置邦彦(東京大皮膚科)

線維化病変においてTGF-b受容体発現亢進が細胞外マトリックス産生亢進に関与している可能性が報告されている。今回我々はTGF-b受容体発現を亢進させるサイトカインとその機序について検討した。正常皮膚線維芽細胞においてEGFはII型TGF-b受容体遺伝子発現量、蛋白量を転写レベルで亢進させ、p38MAPK阻害剤であるSB203580、dominant negative p38MAPKによってその作用は抑制された。以上の結果から正常皮膚線維芽細胞において、EGFはp38MAPKの系を介してII型TGF-b受容体発現を亢進させる可能性が示唆された。

○18. Protein kinase Cによる皮膚線維芽細胞におけるI型コラーゲン遺伝子の転写制御

神人正寿、尹 浩信、三村佳弘、浅野善英、山根謙一、玉置邦彦(東京大皮膚科)

汎発性強皮症(SSc)患者および正常人由来の皮膚線維芽細胞においてI型コラーゲン遺伝子転写制御におけるprotein kinase C (PKC)の作用を検討した。正常皮膚線維芽細胞ではPKC-a阻害剤G・976およびPKC-_阻害剤Rottlerin添加によりI型コラーゲンの産生が低下したが、SSc患者由来皮膚線維芽細胞ではG・976に対する反応性は見られなかった。

○19. 核内ErbB3 binding protein 1 (EBP1) の強皮症(SSc)線維化におよぼす影響

川口鎮司、深澤千賀子、原まさ子、田中みち、西間木江美、市田久恵、勝又康弘、栃本明子、鎌谷直之 (東京女子医大膠原病リウマチ痛風センター)

SScの線維芽細胞(Fb)はpro-IL-1αを過剰に産生しコラーゲンの産生を誘導している。本研究では、IL-1αの転写調節因子として我々が同定したEBP1のSScFbにおよぼす役割を検討する。免疫染色法にてEBP1は、正常Fbでは細胞質に存在し、SScでは核内に集積した。EBP1に特異的なsiRNA遺伝子導入SScFbでは、EBP1の蛋白合成が抑制され、その結果、IL-1α・プロコラーゲン発現が低下した。核内EBP1は、IL1A遺伝子の転写調節因子として働き、強皮症Fbの過剰なpro-IL-1α産生に関与、その結果、線維化を誘導していることが示唆された。

○20. 強皮症(SSc)の線維化におよぼす核内pro-IL-1α結合因子の解析

深澤千賀子、川口鎮司、原まさ子、田中みち、西間木江美、市田久恵、勝又康弘、栃本明子、鎌谷直之 (東京女子医大膠原病リウマチ痛風センター)

SSc線維芽細胞(Fb)でのpro-IL-1α過剰発現が、SSc線維化病変に重要な働きをしていることを報告した。しかし、核内IL-1αがFbに対し種々の蛋白質を誘導する機序は不明である。我々はpro-IL-1αの結合蛋白質のひとつがIL-1RIIであることを同定した。近年、pro-IL-1αのN末近傍に、HAX-1およびnecdinが結合することが報告された。そこで、pro-IL-1α結合蛋白質であるIL-1RII, HAX-1, necdinのSScFbでの発現さらにそれぞれの蛋白質のコラーゲン産生におよぼす影響を検討した。SScFbは、mRNAレベルで3種類の因子すべてを構成的に発現していた。HAX-1およびIL-1RIIのノックアウトFbでは、コラーゲン産生量が減少した。

○21. Sphingosine kinase (SphK)によるTIMP-1遺伝子発現制御について

山中正義、石川 治(群馬大皮膚科)、Maria Trojanowska (Medical University of South Carolina)

近年、sphingosine-1-phosphate (S1P) がシグナル伝達物質として重要かつ多彩な作用を発揮することが明らかとなってきている。本研究では、S1P合成酵素であるSphKに焦点を当て、SphKのTIMP1遺伝子発現に対する影響について検討した。その結果、SphkはTIMP-1の発現を亢進し、その作用は転写レベルで制御されていることが明らかになった。

座長:籏持 淳(獨協医大皮膚科)(15:15〜16:25)
   三崎義堅(東京大アレルギーリウマチ内科)

○22. 強皮症における間質性肺炎の分類と血清マーカー

安井正英,早稲田優子(金沢大呼吸器内科),長谷川 稔,佐藤伸一,竹原和彦(同皮膚科)

SSc45例において,ChestCTおよびBALF細胞分画によりIP±(11),cellular NSIP(5),fibrotic NSIP(13), UIP(9)に分類し,血清KL-6,SP-D,SP-A値を比較検討した.上昇パターンは,UIP(KL-6=SP-D=SP-A),cNSIP(SP-D≧KL-6,SP-A),fNSIP(KL-6>SP-D=SP-A).血清マーカーによりSSc-IPを病態分類できることが示唆された.

○23. 全身性強皮症に伴う肺線維症の臨床的評価における血清SP-D、KL-6値の比較的研究

簗場広一、佐藤伸一、長谷川稔、竹原和彦 (金沢大皮膚科)

全身性強皮症42例における血清SP-D、KL-6値をELISAで測定し比較検討した。初診時のSP-D、KL-6は共に肺線維症(PF)合併例で高値を示した。SP-DはKL-6より感度が高い反面、特異度では劣る傾向が見られた。経時的にSP-DはKL-6より鋭敏にPFの活動性を反映する傾向が見られた。全身性強皮症において両者を併せて経時的に測定することにより、PFをより正確に評価できると考えられた。

○24. 全身性強皮症に合併した間質性肺炎に対するシクロホスファミドパルス療法

小村一浩、簗場広一、長谷川稔、佐藤伸一、竹原和彦(金沢大皮膚科)安井正英(同呼吸器内科)

当科では抗トポイソメラーゼ・抗体陽性全身性強皮症患者に合併した活動性の間質性肺炎に対し、シクロホスファミドパルス療法を施行している。BALF上リンパ球、好中球分画の上昇していた症例やCT・呼吸機能・KL-6・SP-Dが急速に増悪した症例計7例に施行した。そのうち5例はCT上、呼吸機能、KL-6・SP-Dの増悪が抑制され、奏功したと考えられた。治療抵抗性の残り2例に対してはシクロスポリン内服を追加した。

○25. 強皮症と悪性腫瘍の関連性の検討

坂内文男、森 満(札幌医科大公衆衛生学)

最近、強皮症は多発性筋炎、皮膚筋炎に次いで悪性腫瘍の合併率が高い膠原病として注目されている。今回、臨床調査個人票の記載項目を用いて、強皮症と悪性腫瘍の関連性を検討した。10,956例を解析し、肺線維症及び呼吸機能と悪性腫瘍の関連を調べた。その結果、肺線維症と%肺活量には関連がみられなかったが、拡散能が70%以下の症例では合併率が有意に高くなることが判明した(P = 0.03)。

○26. 肺癌を併発した全身性強皮症の解析

中村和子1、小島実緒1、秋山朋子1、近藤恵1、高橋一夫1、佐々木哲雄1,3、池澤善郎1、石ヶ坪良明2(1横市大皮膚科、2同大第1内科、3国際医療福祉大熱海病院皮膚科)

64歳女。1980年SScと診断(41歳)。2003年7月頃より咳嗽出現し、胸部CTで右S6に径3cm大の腫瘤を認め、生検にてSCCと診断。症例2:67歳女。1995年にSScと診断(58歳)。2003年1月の胸部CTで右S9に径5cm大の腫瘤を認め、生検にて腺癌と診断。当科における肺癌併発SSc6例の解析も合わせて報告する。

○27. 当科における全身性強皮症男性患者の解析 特に職業との関連について

佐々木哲雄(国際医療福祉大熱海病院、横市大皮膚科)近藤 恵、秋山朋子、中村和子、高橋一夫(横市大皮膚科)

1991年7月から2001年2月に横市大皮膚科を受診した全身性強皮症患者186名中の男性26名(14%)について解析した。発症は12‾69(平均49)歳、初診は15‾73(平均53)歳。死亡は3例で、67歳肺癌死例は鋳物業、他は52歳肺癌死と62歳肺線維症による呼吸不全死。職業との関連が疑われた8例(31%)は、有機溶剤暴露5例、鋳物業、石工、振動工具使用各1例。職業と関連がないと思われる18例との比較、女性例との比較も述べる。

座長:佐々木哲雄(国際医療福祉大皮膚科)(16:25〜17:35)
   高橋裕樹(札幌医科大第一内科)

○28. 当科で経験した腎クリーゼ合併強皮症2症例の検討

鈴木知佐子,小原美琴子,山本元久,苗代康可,築田浩幸,山本博幸,高橋裕樹,今井浩三(札幌医科大第一内科)

強皮症腎クリーゼ(SRC)は,古典的には悪性高血圧から急速に腎障害が進行する重篤な合併症である.一方,正常血圧SRCも報告され,その一部はMPO-ANCA陽性例で微小血管障害性溶血性貧血(MAHA)を高率に伴い予後不良である.病態別に治療法が大きく異なるためSRC発症早期の鑑別が重要であるが,MAHA合併例での血漿交換の有用性については確立していない.今回 MAHAを合併したSRC2症例を経験しその病態分類や治療につき検討を行った.

○29. 全身性強皮症皮膚におけるhuman parvovirus B19 DNAについての検討

大塚 勤、山崎雙次(獨協医科大皮膚科)

nested PCRを用いて皮膚組織中のhuman parvovirus B19 DNAを検討した。その結果、46例の全身性強皮症中36例(75.0%)、97例の正常人中50例(51.5%)にhuman parvovirus B19 DNAが認められ、全身性強皮症の発現率は正常人と比較して有意に(P<0.02)上昇していた。

○30. 全身性強皮症における心筋障害の評価:心電図同期血流SPECTと交感神経イメージングを用いて

中嶋憲一、河野匡哉、滝 淳一、樋口隆弘、利波紀久(金沢大核医学科),佐藤伸一、竹原和彦(金沢大皮膚科)

本邦では強皮症(SSc)における心筋虚血の頻度は従来の報告より低い。そこで、心筋血流gated SPECTにより虚血と収縮拡張機能およびI-123 MIBGによる交感神経画像を用いて障害の検出能を検討した。対照群10人とSSc群17人で検討した結果、SScでは虚血の頻度は低いが、拡張指標が有意に高く、軽度のMIBG取込み低下とクリアランス亢進を認めた。早期の心機能障害を検出できる可能性が示された。

○31. 強皮症(SSc)における胃食道逆流症(GERD)に対する種々の検査の比較検討

久野英樹,橋本尚明,佐野 統(兵庫医大リウマチ・膠原病科),橋本武則(橋本膠原病センター),柏木 徹(兵庫医大核医学)

SScにおけるGERDに対し種々の検査が行われるが、各検査間の関係は明らかでない。そこで我々はSSc患者19例に上部消化管内視鏡(GIF)、食道造影、24時間胃食道pHモニター及び食道シンチグラフィを行い、それぞれの検査結果を比較検討した。いずれの検査もGERDの病態把握に有用であるが、各検査結果間に乖離がみられる症例も存在した。このため複数の検査による総合的な評価が必要であると考えられた。

○32. 皮膚潰瘍を有する全身性強皮症患者における患肢動脈造影所見

長谷川道子 永井弥生 田村敦志 石川 治(群馬大皮膚科)

皮膚潰瘍を有する全身性強皮症患者5例に対し動脈造影を行い罹患血管を検討した。患者は51〜65歳、全例女性、dcSSc 3例、lcSSc 2例であった。手指に潰瘍を認めた4例のうち3例は固有指動脈、1例は尺骨動脈、足趾および踵部に潰瘍を有した1例では足背動脈が途絶していた。2例に手指切断を行ったが、他は保存的治療で治癒した。罹患部位と予後との関連を検討する上ではさらなる症例の蓄積が必要である。

○33. 強皮症患者における関節可動域の検討

橋本姿惠、遠藤雪恵、山中正義、安部正敏、根岸 泉、清水 晶、石川 治(群馬大皮膚科)

今回、外来患者103名につきFinger to palm distance (FTP) 及び関節可動域を測定し臨床所見との相関を検討した。また、当科作成の日常生活評価表およびHAQにてQOLを評価した。FTPは10mm未満が88名、10mm以上が15名で、2群間において日常生活評価表の不可能な項目数の合計に有意差 (p<0.02) があった。

座長:室 慶直(名古屋大皮膚科)(17:35〜18:45)
   後藤大輔(筑波大内科)

○34. 強皮症阻血指趾に対する自己骨髄単核球を用いた血管新生療法を施行した一例

高橋裕子1) 松井圭司2) 室井一男3) 松 春子1)  奈良浩之1) 岩本雅弘1)  村上善昭2) 吉尾 卓1) 益山純一1) 池田宇一4) 島田和幸2) 岡崎仁昭1) 簑田清次1)(自治医科大アレルギーリウマチ科1) 循環器内科2) 血液科3) 信州大臓器発生制御医学4))

[症例・方法]55歳女性。24歳頃、強皮症を発症した。反復する上肢末梢阻血症状があり、52歳、指趾尖潰瘍のため、指趾を切断した。以後、数回にわたる指趾切断を繰り返した。今回、難治性指趾尖壊疽に対して自己骨髄単核球の局所注入による血管新生術を施行した。左上下肢に骨髄単核球を、右上下肢に末梢血単核球を移植した。
[結果]両上肢の疼痛は著明に緩和し(VAS10→0)、潰瘍は治癒した。創傷治癒に左右差はなかった。
[考察・結論]自己骨髄細胞局所注入による血管新生術で強皮症の難治性指趾尖潰瘍が軽快した。この血管新生術は強皮症の難治性潰瘍の新たな治療法として非常に期待できる。

○35. 皮膚エコーによる全身性強皮症の治療効果の判定

橋壁道雄、大塚 勤、籏持 淳、山崎雙次(獨協医科大皮膚科)

治療により皮膚硬化が改善した全身性強皮症13例(内服・外用PUVA療法11例、prednisolone、etretinate内服治療各1例)の改善部位の真皮厚、真皮エコー強度を高周波皮膚エコーを用いて測定し、治療前後で比較検討した。治療後は治療前に比べ、有意に真皮エコー強度が高値に、真皮厚が低値となった。皮膚エコーは簡便かつ客観的に皮膚硬化の治療効果判定が可能な検査法であると思われた。

○36. 全身性強皮症に合併した顕微鏡的多発血管炎の1例

田中摂子、清水 晶、土屋朋子、遠藤雪恵、永井弥生、田村敦志、石川 治(群馬大皮膚科)

77歳、女性。1978年初診。全身性強皮症と診断し加療していた。1998年より顕微鏡的血尿が出現し、MPO-ANCA陽性。2003年3月、腎機能の急速悪化と両側下腿の紫斑が出現した。皮膚細小血管は壊死性血管炎を呈し、顕微鏡的多発血管炎と診断。ステロイドパルス療法後、プレドニゾロン、シクロホスファミド、へパリンを併用し、皮疹、腎機能は改善した。

○37. ステロイド投与が奏功した全身性強皮症の1例

高橋一夫1、内田敬久1、小林めぐみ1、中村和子1、小嶋美緒1、秋山朋子1、近藤 恵1、池澤善郎1、佐々木哲雄1,2、井上優子3、大野美香子3、石ヶ坪良明3、横田俊平4(1横市大皮膚科、2国際医療福祉大熱海病院皮膚科、3横市大第1内科、4同小児科)

35歳女。H12年7月レイノー症状。9月に手指腫脹、膝関節痛。徐々に悪化。朝のこわばり、RF陽性にてRAの診断でMTX4mg、PSL10mg投与。徐々に軽快。その後前腕〜手指に皮膚硬化出現。当科紹介。Scl-70陽性、生検にて膠原線維の増生みられ強皮症と診断。H14年7月には関節痛、皮膚硬化が全身に進み9月に当科入院。ステロイドパルス2クール、その後PSL30mg、1年かけて現在PSL10mgまで減量。手指の屈曲拘縮以外は経過良好。

○38. 頭部の脱毛と両側性顔面皮膚萎縮を呈した2例

菊田 暁子、室 慶直、富田 靖 (名古屋大皮膚科)、亀井 譲 (同形成外科)

皮疹の分布からMorpheaと両側性のRomberg病との鑑別に悩んだ2例を経験した。症例1.32歳、女性。4年前、右頬部が陥凹、次いで左頬部も陥凹。同時期に頭部の脱毛が出現。症例2.26歳、女性。3年前から左頬部の陥凹と頭部の脱毛が始まり、半年前から右頬の陥凹も出現。2例とも脱毛部に皮膚硬化あり。陥凹部・脱毛部の病理組織像で、膠原線維の変性、真皮と脂肪織に炎症細胞浸潤がみられる。免疫血清学的検査は異常なし。

○39. 全身性強皮症患者の日常生活活動における能力障害の調査

麦井直樹、西 悦子、沢崎詩織(金沢大学医学部附属病院リハビリテーション部),生田宗博(金沢大学医学部保健学科),佐藤伸一 竹原和彦(金沢大学医学部附属病院皮膚科)

SScの評価としてHAQが用いられているが,リハビリテーションにおいても能力障害の評価は極めて重要であり,有効な治療に直結する.我々は患者の日常生活においてHAQ項目を含んだ全106項目で能力障害の大きい活動を調査した.なかでも手指の筋力が必要な缶ジュースやペットボトルのふた開けが困難な患者が多く,ペットボトルのふた開けが困難と感じた患者の機能障害として,握力は18kg以下が多かった.

VII. クロージング・リマーク(5分)

(18:45〜18:50)
近藤啓文(北里大内科)